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第25回

 

 「広州アジア大会・陸上競技科学サポート」


                                  横浜市スポーツ医科学センター 健康科学課 持田尚(スポーツ科学員)


 

はじめに
 第
16回アジア競技大会が中華人民共和国(以下、中国とする)の広州で開催されました。アジア大会は四年に一度行われるアジア地域の国際総合競技大会です。42競技464種目が実施されました。今回は、財団法人日本陸上競技連盟(以下、陸連とする)より、「国際大会における日本選手のパフォーマンス評価のための研究および国際大会における科学サポートのあり方再検討」を目的とした活動への派遣依頼を受け、現地にて活動してきましたので報告します。

活動期間
 
20101119日(金)〜27日(土)

陸上競技大会期間
 
20101121日(日)〜27日(土)

大会会場
 
中国広東省広州市 奥林匹克体育場


活動拠点
マルチサポートハウス
ROYAL MARINA PLAZA
ホテル内
マルチサポートハウスとは、選手・コーチ、サポートスタッフ等が競技会に備えるための総合的なスポーツ情報・医・科学サポートを行う選手村外拠点です。ロンドンオリンピックのマルチサポートハウスのトライアルとして、本大会に設置されることとなりました。これは、独立行政法人日本スポーツ振興センターが文部科学省委託事業『チーム「ニッポン」マルチサポート事業』の一環として設置されたものです。
 なぜ、選手村外にサポート拠点が求められるのか。それは、国際総合競技大会(オリンピックやアジア大会など)でサポートを行う際に、
Accreditation(以下ADと略す)カード発行限定による人的資源の制限や選手村内で各国割り当てられるスペースに制限があるためです。選手のサポートは多様化しNF(国内競技連盟)スタッフのみならずパーソナルトレーナーなども帯同します。それらのサポートを最大化するために、ADカードを持たないスタッフが利用でき、必要に応じて自ら機能やスペースをデザインできる拠点として、アメリカの「ハイパフォーマンスセンター」、オーストラリアやシンガポールの「リカバリーセンター」と同様に、日本でも村外のサポート拠点の設置が求められているのです。
 

活動内容
 
日本選手のパフォーマンス分析
 
強豪国選手のパフォーマンス分析
 
予選ラウンドデータの即時フィードバック
 ►
クラウドコンピューティングを利用した科学サポートの検討

 他国で開催される国際競技会でのデータ収集は、自国で実施するのとは大きく異なり、様々な諸条件による制約が大きいため、工夫が必要となります。機器の制約、測定条件の制約に対応するために、分析方法の工夫に知恵を絞ります。また、運搬コストを考え、機材のコンパクト化も検討していく必要があります。さらに、多視点から撮影した映像を、選手村内にいる選手やコーチ、村外にいる支援コーチが見られる状況にするための検討など、クラウドコンピューティング(Google Docsなど)を活用しながら検討しました。これには、映像変換にかかる時間やアップロードにかかる時間、保存容量限界など、PCのスペック、通信速度、システムの問題などが影響するものなので、現況を確認することができたことは今後の具体的検討に有益でした。


活動スケジュール
 
陸上競技の競技時間は、基本的に午前中(9:0012:00)が予選種目、夕刻(17:0020:00)に決勝種目が行われます。我々は、その競技時間に合わせて活動を行います。セキュリティーチェックに要する時間、トラブル対応の予備時間、事前準備の時間などを考慮し、競技開始2時間前には現地に到着するようにしました。1時間(片道)の移動時間を足すと…。さらにサポートハウス到着後は撮影したデータの整理(名前やタグ付け)を行うなど、タイトな活動スケジュールとなりました。



交通
 アジア大会に向けて中国初の
都市間を結ぶ地下鉄が整備されました。この地下鉄はアクセスストレスが少なく、たいへん使いやすかったです。ADカードやチケットを持っている人は大会期間中無料で利用できました。通常料金は、機場南駅(空港)から番寓広場(マルチサポートハウス)まで3号線で1本なのですが、90分ほど(23駅)乗車して16元(1元≒14円)でした。円にとってはとても安い運賃でしたね。




テロ対策
 大会開催にともなうテロ対策は徹底していました。中国新聞社が「有史以来もっとも厳しい安全検査」と紹介するのもわかります。そのため、地下鉄改札入り口での混雑・混乱ぶりは大変なものでした。










おわりに
 今回、
マルチサポートハウスが設置されたことで、他競技のサポートスタッフらと交流することができました。日本チームの強化状況やジュニア育成の課題など話題にあがりました。今後も連絡を取り合い情報交換していこうと思っています。当センターでは、ジュニア医科学マルチサポート事業を展開しています。今年度は横浜市ジュニア事業を受託し、サッカー、陸上競技、空手、スキー、ソフトテニスに対してテーマごとに競技力向上事業を展開していきます。各種目における日本チームの現状と世界基準を把握しながら、横浜独自に求められるものに対して医科学的に支援できるよう、今回の経験を活かしながら努力していきたいと思います。


                                                                      陸連(科学委員)と国立スポーツ科学センター
                                                                      スタッフの科学サポートクルー (執筆者:上段右)

 
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