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第26回

  「減量教室の医学的効果」


     横浜市スポーツ医科学センター 診療部長 長嶋淳三(内科医)、内科診療科長 木明彦(内科医)



  
肥満は高血圧・糖尿病・脂質異常症・メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の原因となり、心筋梗塞や脳卒中の危険を高めます。

 当センターでは3ヶ月間の運動・食事療法による減量教室を開催しております。今回は減量教室の参加者のうち、薬剤を使用していない125名を対象に、減量教室の医学的効果を分析し、Journal of Cardiology誌(
Three-month exercise and weight loss program improves heart rate recovery in obese persons along with cardiopulmonary function.  J Cardiol. 2010 Jul;56(1):79-84. Epub 2010 Apr 7.に発表いたしましたので、概略をご報告いたします。別表に各測定値の変化をお示しいたします。
 
 体格の指標である体重、BMIbody mass index)、体脂肪率、腹囲、皮下脂肪面積および内臓脂肪面積は有意に改善を認めました。代謝関連血液検査ではLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、中性脂肪、空腹時血糖、空腹時インスリン(血糖を下げるホルモン)、ヘモグロビンA1c (糖尿病の指標)、レプチン (食欲を抑制するホルモン)HOMA-R(インスリンに対する身体の抵抗性)が有意に改善しました。血圧は収縮期(上の血圧)、拡張期(下の血圧)とも有意に改善を認めました。生理学検査の指標では、心肺機能を表すPWC75%HRmax / weightが有意に改善し、自律神経機能の指標である運動負荷後心拍回復にも有意な改善を認めました。

 以上の測定結果から、食事制限だけではなく、運動療法も取り入れた当センターの減量教室では、体格、血液、血圧などの医学的指標の改善だけではなく、心肺機能と自律神経機能の改善をもたらし、総合的な身体能力を改善する事が判明いたしました。

 身体能力の改善は、疲れにくい体作りにつながり、運動習慣を無理なく身に着けやすくなり、生活習慣の好循環をもたらすことが期待されます。自己流の減量で失敗経験のある方は、是非、当センターの減量教室をご利用下さい。

減量教室施行前後の生理学および生化学検査所見 (125)

 

     前

     後

 
体重 (kg)
BMI (kg/m2 )
体脂肪率%
腹囲 (cm)
収縮期血圧 (mmHg)
拡張期血圧 (mmHg)
PWC75%HRmax / weight (watts/kg)
運動負荷後心拍回復(2分)
皮下脂肪面積 (cm2)
内臓脂肪面積 (cm2)
HDL
コレステロール(mg/dl)
LDLコレステロール(mg/dl)
中性脂肪 (mg/dl)
空腹時血糖 (mg/dl)
空腹時インスリン (µU/ml)
ヘモグロビンA1c (%)
レプチン (ng/ml)
HOMA-R
70.9±11.4
28.3
±3.5
38.0
±6.2
99.2
±9.0
133.5
±20.5
82.5
±13.0
1.2
±0.4
37.4
±12.8
310.6
±85.3
123.7
±51.9
53.4
±11.5
129.2
±27.7
130.4
±82.2
104.9
±15.1
10.8
±7.8
5.4
±0.5
14.4
±6.9
2.9
±2.2
66.0±10.9
26.3±3.4
34.0±6.6
93.2±9.3
124.0±19.2
75.8±12.6
1.5±0.4
46.3±13.5
255.7±83.4
94.5±46.4
52.9±10.8
114.1
±24.6
93.3
±55.9
98.0
±9.4
7.4
±5.7
5.2
±0.3
7.3
±4.3
1.8
±1.5

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