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スポ医科コラム

 運動習慣は喫煙による血栓形成傾向を相殺する

                       横浜市スポーツ医科学センター 診療部長 長嶋淳三、内科診療科長 木明彦

高血圧症は動脈硬化の代表的な原因疾患です。動脈硬化を起こした血管では血栓(血の塊)が出来やすくなり、脳梗塞・心筋梗塞を引き起こします。また、喫煙は直接的に、動脈硬化・血栓形成を促進します。一方で、運動習慣は動脈硬化・血栓形成を抑制することが知られています。

 当センターでは高血圧症で薬物治療中の患者109名を対象に、血栓形成傾向の指標である、血中プロトロンビンフラグメントF1+2F1+2)を測定し、喫煙習慣と運動習慣の有無で4群に分類し、比較検討いたしました「Influence of physical fitness and smoking on the coagulation system in hypertensive patients: effect on prothrombin fragment F1+2. Intern Med. 2007;46(13):933-6. Epub 2007 Jul 2.」。

 別図にF1+2の比較結果をお示しいたします。最も血栓形成傾向が低い(F1+2が低値)のは、運動習慣があり(regular exercise)喫煙もしない方(non-smokers)で、最も血栓形成傾向が高い(F1+2が高値)のは運動習慣が無く(no exercise)、喫煙する方(smokers)でした。運動習慣が無く、喫煙もしない方と、喫煙はするが運動習慣のある方の比較では、後者の方が血栓形成傾向は低く(F1+2が低値)、運動習慣があり喫煙もしない方に近い数値を示しました。

 この結果からは、運動習慣は、喫煙による血栓形成傾向を相殺する可能性が示唆されました。高血圧など生活習慣病の持病の有無に関わらず、喫煙をしない事がベストであることは言うまでもありません。しかし煙草の身体依存性は覚醒剤に次いで高く、ニコチン依存症治療薬を用いても禁煙成功率は約7割に留まっています。持病や喫煙習慣の有無に関わらず、すべての方が運動習慣を身に着けるべきであることは言うまでもありません。運動習慣がなく、どんな運動をすれば良いのか判らないという方は、医学的検査・体力検査結果に基づいた科学的な運動習慣アドバイスを提供する、当センターのSPS(スポーツ版人間ドック)を是非ご利用下さい。