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スポ医科コラム

 第22回 日本臨床スポーツ医学会学術集会参加記

                  横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 森田寛子(理学療法士)

「スポーツ医学という分野は実に幅広い!」ということを実感する学会、それが臨床スポーツ医学会という学会です。この学会には整形外科分野にとどまらず、循環器、内科、眼科、歯科、皮膚、ドーピング、代謝など、スポーツという共通言語を元に様々な専門分野の人が集まります。今年の学術大会は11月5、6日に青森にて開催されました。スポ医科からも参加・発表して参りましたので、今回はその様子を皆さんにご報告したいと思います。
 


【写真左:学会会場の中にねぶたがありました。青森らしいですね】
【写真右:ポスター会場の様子。このような部屋が5部屋もありました!】

 今年は「競技復帰に向けて」をメインテーマに掲げて、膝前十字靱帯損傷からの競技復帰を競技別に紹介したり、関節軟骨損傷からのスポーツ復帰の現状と今後の展望、野球肘の治療と予防、成長期の腰部スポーツ傷害、スポーツによる内科的急性障害、女性アスリートに対するメディカルサポートというシンポジウムを中心に講演が行われました。
 私が聴講できた中で特に印象的だったのは、膝前十字靱帯の受傷メカニズムが徐々に解明されつつあること、今まで謎が多かった股関節の痛みの原因・治療法が年々確立してきていること、投球障害に関する演題の中でも野球検診に関するものが例年と比べて増えていることなどが挙げられます。
 理事長講演では、今年8月に施行された「スポーツ基本法」についての紹介がありました。この法を機に我が国におけるスポーツ活動がますます発展するだろうということ、それに伴ってスポーツ医科学の重要性が高まるだろうということを、この講演を聴いて実感しました。


 スポーツ医科学センターからは4題の研究を発表し、清水医師は「下肢」というセッションの座長をつとめました。スポ医科からの発表内容を以下に簡単にご紹介します。

赤池 敦 「テニスプレーヤーにおける疾患の性差および年代差について」

テニスプレーヤーにはどんな疾患の特徴があるのか?ということを調べました。結果は、ジュニアでは腰痛症が最も多く、次にテニス肘が多い結果でした。壮年の1位は腰椎椎間板疾患、2位は肩腱板疾患でした。シニアでは変形性膝関節症が最も多く、腰椎椎間板疾患が次に続くという結果でした。この発表から、同じテニスプレーヤーでも年代別に特徴があるということがわかりました。

河村真史 「小学生サッカー選手におけるオスグット・シュラッター病の発生要因に関する前向き研究」

どのような身体的特徴を持った小学サッカー選手がオスグット・シュラッター病を発症するのか?ということを調べました。発症した人は発症していない人と比較して、利き足側の体幹回旋、両股関節外旋、軸足膝関節屈曲の可動性が低いという結果でした。これらの可動性の低下が発症に関係しているのではないかということがわかりました。

坂田 淳 「内側型野球肘患者における“肘下がり”の投球フォームの運動連鎖と理学所見の関連」

野球肘で疼痛を訴えている患者さんにはコッキング相で肘が下がっているフォームをしていることが多いのですが、ではなぜ肘が下がってしまうのか?肘下がりに関連している特徴を調べました。結果は、ストライド相でのHyper Angulationやアームコッキング相での上体の突っ込みや非投球側への体幹の側屈が影響していました。肘下がりを修正するには様々な因子が影響していることがわかりました。

森田寛子 「非予測条件がサイドステップカッティング動作時における膝周囲筋筋活動に与える影響」

膝の外傷はカッティング動作における発生率が高いです。その動作を実際の受傷場面に近い環境を作り上げたとき、膝周りの筋肉はどのような活動をしているか?ということを調べました。結果は、ハムストリングスという筋肉がうまく活動する人としない人がいて、このような筋活動の違いが外傷発生に関連している可能性があるということがわかりました。



【写真左:発表後の坂田氏(一番左です)。演題発表後に質疑応答をしています。】
【写真右:自分の発表ポスター前で撮影しました(森田)】
 
  スポーツを取り巻く環境は常に進化しております。スポ医科では、このような学会に参加し、スポーツ医科学に関する情報を常にアップデートすることで、皆様の競技復帰のお役に立てればと思います。ちなみに、来年度の学会は横浜で開催です!来年はどのような演題が横浜に集まるのでしょうか、今から楽しみですね。