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リハビリ室コラム / Rehabilitation Column

ハムストリングス肉離れのリハビリテーション リハビリテーション科 木村 佑(理学療法士)

 筋が急激に収縮したり引き伸ばされることにより筋の一部が断裂することを肉離れといいます。ハムストリングス肉離れは全力で疾走をする競技において頻回に発生するスポーツ外傷で、太ももの裏に鋭い痛みが生じます。

 ハムストリングス肉離れのリハビリテーションにおいては、(1)損傷部位の回復の促進、(2)筋の柔軟性改善、(3)筋力回復、(4)再発を予防しながら競技復帰することが重要です。なお、ケガの重症度によりリハビリテーションの進め方が異なるため医師と相談しながら治療をしていきます。

(1)損傷部位の回復の促進

 損傷をした筋は、炎症という過程を経て断裂した部位が回復していきます。受傷直後は、痛みとともに炎症が生じるため、アイシングや圧迫といった急性期の対応が必要です。また、微弱電流を用いることで、損傷した筋の回復を早めることができます。

(2)柔軟性の改善

 筋は回復過程で通常よりも柔軟性が低下します。柔軟性が低下したまま競技に復帰してしまうとパフォーマンスの低下や再発の危険性の増大など多くの悪影響が生じます。リハビリテーションにおいては、患部を押したときの痛みや筋を伸ばした時の痛みが減弱した後に、筋の柔軟性の改善を図ります。最初は、患部の周りのマッサージから開始し、徐々に太ももの裏全体のストレッチへと移行していきます。また、損傷した部位自体が硬くなりやすいため、超音波治療器を用いて患部を温めることで、より効果的に筋の柔軟性を回復させることができます。

(3)筋力の回復

 肉離れを起こすと、損傷の影響や活動制限により筋力が低下します。筋力が回復しないまま競技に復帰すると筋の柔軟性低下と同様に多くの悪影響が生じます。復帰に向けて筋力強化が重要となりますが、過度なトレーニングは痛みの再発につながります。そのため、損傷部位の回復の程度や疼痛に注意しながらトレーニング方法や強度を決定する必要があります。また、競技復帰時には受傷していない足と比較し、90%以上の筋力回復が望まれます。筋力は目で見て確認することが難しいため、専用の筋力測定機器を用いて筋力のアンバランスが生じていないことを確認したうえで競技へと復帰するようにします。

(4)再発予防

 肉離れは再発を生じやすいスポーツ外傷です。再発を予防するためには、日常のセルフケアやランニングフォームの確認、体幹機能の向上も重要です。

 軽症の場合は数週間程度で競技復帰が可能ですが、重症の場合は復帰までに数か月を要することもあります。疾走中に太ももの裏に急激な痛みが生じた場合には、自己判断をせずに早急に医療機関へ行くことが大切です。筋の疾患はレントゲンでは重症度の判断がつかないため、MRIや超音波診断装置のある病院へ行きましょう。なお、当院には、MRIおよび超音波診断装置の両方の設備が整っています。