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リハビリ室コラム / Rehabilitation Column

ランニング動作の評価 リハビリテーション科 木村 佑(理学療法士)

 近年のランニングブームにより、老若男女を問わずランニングを定期的に行っている人が増えているようです。競技人口が増加するとそれに伴うケガも増加するのが世の常で、当センターにも、部活動や社会人チームで競技として本格的に行っている人から健康増進やストレス解消のために行っている人など様々な競技レベルの方が、ランニングによる膝や足の痛みで訪れています。

 一般的にランニング障害と言われているケガは、その発生部位こそ膝や足首、足の裏など様々ですが、その要因は一回の大きな外力による損傷ではなく、微細な外力の繰り返しにより生じている点で一致しています。ランニング動作に問題がある場合は、休養するだけ、あるいは我慢して走り込むだけでは良くならない事が多いです。しばらくランニングを休んだにも関わらずランニングを再開すると同じように痛みが生じる、一定の距離を越えると痛みが生じる、速度を上げると痛みが生じるといった声をよく耳にしますが、これらの方に関しては、ランニング動作を改善する必要があると思われます。

 ランニング動作を改善するにあたっては、まずは疼痛の原因となっている動作を評価する必要があります。ランニング動作は様々な関節運動が連動する複雑な動作であるため、動作を診る際には動作を細分化して診るようにします。また、不良動作の根底には個々の関節運動の異常や筋力低下などの問題が関係しているため、関節の可動域や筋力を評価することも大切です。そのため、ランニング動作の評価は(1)関節を診る、(2)動作を細分化して診る、(3)動作全体を診る、の手順で行います。

(1)関節を診る

 まずは痛みの生じている部位の熱感や腫張といった炎症症状や痛みの評価を行います。痛みの評価を詳細に行い痛みの原因となるストレスを推察したうえで、関節の硬さや筋力などを評価します。疼痛のある関節のみではなく、隣り合う関節(膝であれば足首や股関節)やランニング動作に関与する関節を評価します。

(2)動作を細分化して診る

 ランニングは様々な関節運動が連動する複雑かつ素早い動作であるため、その場で動作を再現することは困難です。そのため、ランニング動作中に痛みが生じるタイミングを聞き、そのタイミングに類似した動作を評価します。たとえば、ランニングの接地時に疼痛が生じるのであれば片脚立ちバランスや片脚スクワット、ホップ動作などの評価を行います。また、蹴り出しで疼痛が生じるのであれば片脚の踵上げや蹴り出し動作などを評価します。ランニングは様々な動作が連動して行われるため、異常な動作が生じているタイミングのみではなく、その前後の動作を評価することも大切です。

(3)動作全体を診る

 関節の評価や細分化した動作だけでは情報が不足する場合に関しては、ランニング動作全体を評価します。リハビリ室の広いスペースや隣接するトレーニングルームのトレッドミル上でランニングをしてもらい、必要に応じてデジタルカメラなどで動作を記録し詳細に評価をします。

 これらの評価をもとに、個々に必要なリハビリを行っていきます。また、大会のスケジュールに応じて治療計画を立案していきますので、ランニング障害でお困りの方は、ぜひ一度、当センターの整形外科をご受診ください。なお、各疾患の治療に関しては、今後、当コラムにて紹介していく予定です。