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リハビリ室コラム/Rehabilitation Column

第27回臨床スポーツ医学会学術集会 参加記 横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 松田 匠生 (理学療法士)

 「第27回臨床スポーツ医学会学術集会」が11/5・6 の2日間、幕張メッセで行われました。大きな成果を上げた、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックから3ヶ月後に行われた今学会のメインテーマは、「Rio to Tokyo」でした。オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツ医学がどのように貢献できるかを考える機会となりました。

会場入り口

 学会の具体的な内容は、「傷害予防」、「女性」、「子ども」がキーワードとなっており、興味深い内容が盛りだくさんの学会でした。傷害予防の観点からは、早稲田大学の福林徹先生に「スポーツ医学の新しい魅力−外傷・障害の治療から予防へ−」という内容の講義をして頂きました。スポーツ医学界では、以前からスポーツ外傷障害の治療法が重視され、早期復帰に向けた治療法の確立を目指してきました。しかしながら、治療法の進歩のみでは外傷障害の発生頻度は減少しておらず、問題となっています。そのような認識から、予防法の確立をするために、FIFAは予防プログラムの作成、理論的裏付けを、IOCはWorldConference on Prevention of Injury and Illness in Sports を開催し予防に取り組むようになりました。東京オリンピック・パラリンピックの選手強化に向けて、外傷障害をいかに減らすかがポイントであり、そのためには現場においてスポーツドクターとアスレティックトレーナーが協力して取り組むことが必要であると学びました。

 また、当センターのリハビリテーション科からは一般演題で坂田淳、中田周兵、松田匠生が発表を行いましたので簡単にご紹介します。

●坂田淳「学童期野球選手における肘内側障害への予防介入結果−無作為化比較対象試験−」
 少年野球選手に対して、投球障害予防プログラム「YKB9+」を作成・実施し、肘内側障害発生の予防効果を検証しました。予防プログラムを実施した選手143 名中14名(9.8%)に、プログラムを行わなかった選手178名中41 名(23.7%)に肘内側障害が発生しました。プログラムを行った方が肘内側障害になる確率が62.8%減るという結果でした。そのことから、当センターで行っている投球障害予防プログラムをYKB9+の有用性が示されました。

●中田周兵「膝前十字靭帯不全の若年女性スポーツ選手の歩行動作の下肢キネマティクスの特徴」
 前十字靭帯損傷をした女性スポーツ選手の歩き方が、どのように変化するのを検証しました。その結果、歩行中に股関節の内旋(股関節が内股方向)、と膝関節の内反(膝がO脚方向)、足関節の外旋(つま先がガニ股方向)が大きく、重心が外側に流れる事が分かりました。また、このような歩行の変化は、足関節と股関節→膝関節→重心のブレに繋がっていたため、リハビリで正常歩行獲得を目指す際には、膝だけでなく足関節や股関節にも着目する必要があることがデータとして示されました。

●松田匠生「Jones 骨折既往のある大学サッカー選手の足部アライメント・足底圧の特徴」
 治療が難しいとされている、第5中足骨疲労骨折(Jones 骨折)の既往のある選手の特徴を検証しました。その結果、Jones骨折を発症したことがある選手の後足部が外反(踵の骨が外側方向)、前足部が内反(つま先の骨が内側方向)している事が分かりました。そのことから、前足部と後足部のギャップがJones 骨折と関連している可能性が示されました。

 今回の第27回臨床スポーツ医学会学術集会では、オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツ医学が貢献できることについて考えることが出来ました。学会に参加した1人1人が、今回得たことを現場、臨床に還元する事で少しでも日本スポーツ界に貢献できればと思っています。