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第11回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)参加記

去る6月13日(木)~15日(土)、北海道は札幌コンベンションセンターにて『第11回 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS 2019)』が開催されました。JOSKASは、日本のみならず世界の膝関節や関節鏡、スポーツ整形外科を牽引する学会です。

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当センターからは清水邦明医師が演題発表しましたので、その内容を以下に簡単にご紹介します。

清水 邦明 「骨端線開存例に対する一束ACL再建術の経験」
骨端線が開存していた成長期の症例に対する膝前十字靱帯(ACL)再建術の臨床成績をまとめた演題でした。対象となった17例全例において、最終経過観察時点で明らかな下肢長差や外反変形を生じた者はいませんでした。しかし、膝関節の安定性が成人の症例と比べてやや劣る傾向にあり、3例が再受傷したことから、成人とは異なったアプローチの必要性が示唆されました。

私は3日間を通じ、病理組織学関連の講演やシンポジウム、一般演題を中心に聴講していました。本学会では、スポーツ整形外科分野の基礎研究の発表が非常に盛んに行われます。正直申し上げて、これまでは病理組織学にどこか苦手意識があったのですが、改めて勉強してみると多くの学びや気づきがありました。ある組織がどのような成分でできているのか、また破綻する過程でどのように変化するのかを知ることにより、傷害の発生メカニズムや病態進行プロセスが非常にクリアになります。また、そこから得られる知見のなかには普段の診療であまり意識していなかったことも含まれており、基礎研究を通じて自身の臨床を見直すことができた気がします。その一方で、本学会だけでも毎年数百から千近くもの演題発表があるにもかかわらず、多くの疾患の病理組織学には不明な点がまだまだ山のようにあるのが現状であることに驚かされました。分野によってはこれまでの通説が覆ることもしばしばあるようで、最新の知見をキャッチアップしつづけることの重要性を痛感しました。個人でその全てを網羅するのはなかなか難しいので、リハビリテーション科内ではチームとして常に知識をアップデートするシステムを今以上に盤石にする必要があると考えています。

他にも、今回のテーマ「融合、革新、そして次の10年へ」を受け、様々な医療従事者間のシンポジウムや医工連携セッション、実際の取り組みに関する講演が企画されていました。なかでも参加者の多くが魅了されたのが、かつてのサッカー日本代表監督の岡田武史氏(現『株式会社今治.夢スポーツ』 代表取締役会長)の特別講演ではなかったでしょうか?氏が掲げる「複合型スマートスタジアム構想」を中心に、広い視野から導かれた理想の未来をとても力強い言葉で楽しそうに語るその姿には、とても感銘を受けました。このような機会を通じた専門家たちの叡智と努力の融合こそ、次世代のスポーツ整形外科の発展の礎になるものと思います。

全体を通してメッセージ性の強い学会だったこともあり、濃密な3日間を過ごせました。今回の学会参加を科内や患者の皆様にも還元できるよう、学んだことを自分でも深く調べるつもりです。