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リハビリ室コラム/Rehabilitation Column

第33回日本臨床スポーツ医学会学術集会 参加記

横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 柴田 真子(理学療法士)

(令和4年11月)

11月12日(土)〜11月13日(日)、北海道札幌市で「第33回日本臨床スポーツ医学会学術集会」が開催されました。新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、第31回・第32回の2年間はオンラインでの開催でした。今年は3年ぶりに対面での開催となり、一部オンデマンド配信もありましたが、リアルタイムでの発表やディスカッションに熱を感じる会となりました。

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本集会は昨年開催されました東京2020大会を経ての演題や、新型コロナウイルス感染症に関わる演題も多く見られました。本集会のテーマでもある「新しい世界、スポーツサイエンス」にまつわり、ウィズコロナ時代におけるスポーツにあり方や、新しいスポーツ医科学への発展について考える大きな機会だったと感じてます。

当センターからは、理学療法士5名(柴田・佐々木・小林・今・大井)と理学療法助手1名(彼島)が参加し、佐々木理学療法士が口述発表、小林・今・大井理学療法士と彼島理学療法助手がポスター発表をしましたので、内容を以下にご紹介します。

佐々木 翔平「月経周期中の女性ホルモン濃度の変動が静的足部アライメントに及ぼす影響について」


(内容)月経周期中の静的足部アライメント変化および女性ホルモン濃度の変化量と足部アライメント変化の関係性について検討した。結果として、月経周期における卵胞期後期に後足部外がえし角度は優位に増加した。また、エストロゲン/プロゲステロン比変化量およびプロゲステロン濃度変化量の間には有意な相関を認めた。そのことから、月経周期中に足部アライメントが変化することが明らかとなった。また、エストロゲンとプロゲステロンの比率の変化が足部アライメントに影響を及ぼす重要な因子であることが示唆された。

(コメント)私自身は、理学療法士以外の職種も参加する全国学会での発表は初めてであり、緊張感を持って様々な職種の方々とディスカッションを行うことで、視野を広げることができ非常に有意義な時間となりました。

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小林 優理亜「ジュニア器械体操選手の慢性障害既往と身体機能の関連」

(内容)男女ジュニア器械体操選手の慢性障害既往と身体機能の関連を検討した。結果としてジュニア体操選手は男女ともに腰部の既往が多く、男子は股関節と肩関節可動域、女子は股関節伸展可動性の低下が要因となる可能性が示唆された。また、女子は下肢へ負担がかかる種目が多いため、膝関節の既往も多く、股関節可動域の低下が関連すると考えられた。

(コメント)本学会は医師や理学療法士など様々な立場からの発表があり、それぞれの立場からの新たな知見を得ることができ、自分自身の知識や考えを広げることができました。 新たに学んだことを診療や現場での活動等にも活かし、サポートさせていただく皆様の力になれるよう今後も精進して参りたいと思います。

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今 花夏「スポーツ早期専門化が着地・バランス能力に及ぼす影響の検討」

(内容)幼少期から1つのスポーツのみ行うスポーツ早期専門化は外傷・障害リスクを高めるとされている。今回は外傷・障害リスクの要因の1つである着地・バランス能力に着目し、スポーツ早期専門化が着地・バランス能力に影響を及ぼすかを検討した。結果として、大学女子バスケットボール選手においては、幼少期から1つのスポーツのみ行う群は非利き足の床反力と衝撃緩衝係数が有意に高くなったことから、早期専門化を進めることは着地・バランス能力に影響を及ぼし、競技継続に伴う外傷・障害発生に関与する可能性が示唆された。

(コメント)私自身は、対面による学会参加は初めてとなり、緊張しながらもさまざまなシンポジウムや講演、演題発表を聴講し、学会の緊張感や活気を感じることができました。また、今後も学会に参加することで、最新の知見を得たり、学会を通してさまざまな先生方と交流したりし、自分自身のスキルアップに繋げたいと思います。本学会は理学療法士だけでなく、医師、アスレティックトレーナーなどスポーツに関わる職種の方々が参加していました。さまざまな視点から「スポーツ」に関わるテーマに対して議論している様子をみて、私自身も多くの人と議論できるようになりたいと、とても良い刺激をもらうことができました。今回の経験を通して、今後も多くの患者さまに還元できるように精進していきたいと思います。

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大井 望咲 「スポーツにおける感染予防戦略の構築〜運動負荷によるエアロゾルの動態」

(内容)運動課題により排出されたエアロゾルの粒子径ごとの空間内粒子数を計測し、感染予防策の提案を行った。結果として、エアロゾルは運動開始時点から粒子数が上昇し、運動負荷による粒子数の影響があるのは運動後80秒間であった。

(コメント)私は初めての学会参加であり、スポーツ場面で生じる外傷・傷害や感染予防対策を徹底したメディカルチェックについて、大会帯同報告など、様々な観点からスポーツに関する研究の発表に触れることができました。限られた時間の中で著名な先生によるシンポジウムや、興味のある一般演題を聴講しました。診療を行う中で疑問に感じていた点や、診療で活用できるトレーニング方法など、新たな知見を得ることができました。今後の診療や研究の参考にしていきたいと考えております。

彼島奈々「ハンドボール競技中における身体衝撃と足関節捻挫既往との関係」

(内容)ハンドボール競技中に身体にかかる負荷について加速度計を用いて測定した。高衝撃(合成加速度が6G以上)となった頻度を算出し、足関節捻挫の既往との関連を検討しました。同側の足関節捻挫が2回以上ある選手を"再発群"、同側の足関節捻挫の既往が1回以下の選手を"非受傷・非再発群"として解析をしたところ、高衝撃動作の頻度は、再発群で有意に高かったことがわかった。そのことから、ハンドボール競技において衝撃吸収能力を向上させることは、足関節捻挫の予防において有用である可能性が示唆された。

(コメント)自分の研究を発表することは様々な準備が必要であるため、改めて学会に参加することの難しさを感じました。私の演題は、コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインでの発表となりましたが、現地では自分の研究の参考になるような研究も発表されており、今後につながる良い機会となりました。