横浜市スポーツ医科学センター

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リハビリ室コラム / Rehabilitation Column

第25回 臨床スポーツ医学会学術集会 参加記 横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 中田 周兵 (理学療法士)

 去る11月8日(土)・9日(日)、国立スポーツ科学センターと味の素ナショナルトレーニングセンターにて『第25回日本臨床スポーツ医学会学術集会』が開催されました。本学会では、多岐に渡るスポーツ医科学関連の研究・調査が報告されます。当センターでは11月8日(土)を休診とさせていただき、整形外科およびリハビリテーション科の全スタッフが参加しました。

 昨今、日本のスポーツ界は大きく変わろうとしています。特に、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定され、スポーツ庁の設置に向けた検討も行われています。そのような背景もあり、本学会のメインテーマは「アスリートを支えるスポーツ医学」となっていました。実際に、例年に比して競技スポーツに関わる演題が多くなっていたとともに、スキンケアやデンタルケア、咬合解析、視覚機能、平衡機能など、一般的なスポーツ整形外科以外の分野のシンポジウムが多く用意されていました。また、過去のオリンピックでの医科学サポートやメディカルチェックの報告、暴力・ハラスメントの実態調査、ジュニア競技者のサポートの展望など、スポーツ医学界の経験や課題を共有する場が設けられていたことも有意義だと感じました。

 当センターからは、坂田淳(リハビリテーション科)、中村絵美(リハビリテーション科)の2名が各々の研究結果を報告しました。両者の発表は聴衆から多くの質問が投げかけられ、関心を引いていた様子でした。以下に、発表内容を簡単にご紹介します。

坂田淳 「少年野球選手における肘障害発生の前向き調査 」

 当センターで実施している少年野球選手を対象としたメディカルチェックの一環で、肘関節の障害部位ごとに発生の危険因子を調査した研究です。発生率が最も高かった肘内側障害には、高学年であることや投球数が多いポジション、胸椎後彎角、肩関節後方タイトネス、肩内外旋合計可動域、踏み込み脚の股関節内旋制限などが関与していることが明らかになりました。

中村絵美 「少年野球選手における投球数の実態と肩痛発生について〜 1年間の前向き調査〜」

 同じく、メディカルチェックに参加した少年野球選手を対象に、1年間の投球数と肩痛発生の関連を調査した研究です。1日の平均投球数が80球以上の選手は80球以下の選手に比べ肩痛が発生する可能性が1.77倍と算出され、少年野球選手の投球数を検討する一指標となることが示唆されました。

 その他のスタッフは、各々の専攻分野を中心に演題を聴講しました。私の専攻分野は下肢外傷予防ですので、膝前十字靱帯損傷の予防に関するトピックを少しだけご紹介します。膝前十字靱帯損傷は実に様々な競技で発生することを受けて、近年ではスポーツ特性を考慮した研究が多く行われています。その結果、これまで明らかになっていなかった道具(例:スキー板)や技術(例:ラグビーのタックル)の関与も示唆されてきたようです。しかし、いざこのような研究結果をルール等に反映させようとすると選手や関係者からの反発も多いようで、やはり外傷予防は一筋縄ではいかない現状もうかがえました。かつて、アメリカンフットボールにおいてスピアリング禁止のルール変更により選手の死亡事故の発生率が大幅に減少したという事例がありましたが、このようなブレークスルーが生まれる裏には研究者の真摯な想いと現場の理解があることを改めて感じました。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けては、選手強化と同時にスポーツを安全に行える環境づくりが必須といえます。我々、横浜市スポーツ医科学センターも、それらにどう貢献していくのかが問われています。スタッフのなかにはスポーツ現場に出向く者や研究に従事する者、プロチームに帯同する者などが多くいますが、皆が一丸となってスポーツ医科学の発展に携わりたいと思っています。

坂田理学療法士

中村理学療法士