横浜市スポーツ医科学センター

  • アクセス
  • Q&A
  • リンク集
  • 文字サイズ A A A
  • お電話でのご予約・お問合わせは045-477-5050

リハビリ室コラム / Rehabilitation Column

第89回 日本整形外科学会 参加記 横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 来住野 麻美 (理学療法士)

 5 月12-15 日に渡りパシフィコ横浜とヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテルで開催された『第89 回日本整形外科学会』に参加させていただきました。本学会はすべての分野の整形外科において講演や研究発表が行われる大規模な学会です。横浜らしい海の見える素敵なロケーションのもと、12 の会場と大きな展示ホールを使用しての盛大に開催されました。今回は「伝承、革新、そして新たな伝統」というテーマのもと、これまでの整形外科のあゆみやこれからの新しいテーマをみつけられるような会であったように感じます。

 参加した講演の中から特に印象が深かった2 つのテーマについてご紹介いたします。

 1 つめは「膝前十字靭帯損傷」についてです。
 "治療法の推移と今後の展望"という講演では、まず損傷後の再建術についての話がありました。再建術における術式は近年の議論の中心であったこともあり、おおよその方向性はまとまってきたように感じました。それらの手術による治療は一定の成果があるといえますが、スポーツ復帰後に再損傷が存在することやけがをする前と全くと同じ状態にならないことが多いなどの課題を抱えています。そのため、今後はいかにけがをする前の靭帯に戻すのかという点が焦点になります。現在、機能的な面だけではなくミクロ、マクロの状態まで実験や観察は行われており、今後はより精度の高い手術が期待できると感じました。
 また、"手術後の成果をどう評価するのか"という講演では、画像診断や機器を使った評価方法の報告がありました。膝前十字靭帯再建術にスポーツに復帰するためには筋力や安定性などの客観的評価、不安感がないかなどの主観的評価などいくつかの条件をクリアすることが必要となります。この講演では特に医師らが診察時に行う客観的評価について、正確かつ誰がおこなっても同様の結果になるような評価方法を決定するべくさまざまな観点から検討がなされました。画像診断は正確ですが時間や費用がかかってしまうことから、評価用の機器の開発も活発です。精度がよいとの研究結果も出ており、一般化する日も近いのではないかと思います。

 2 つめは「女性スタッフにおけるメディカルサポート」についてです。この講演は新しい試みとして行われたスマホ参加型セッションでした。スマホ参加型セッションとは、スマートフォンやタブレットを利用して講義を聴いている者が討議に参加するシステムで、講師の方の質問に回答をしたり意見を送ったりすることができます。このセッションではスポーツ現場で実際にサポートを行っている女性の整形外科医、産婦人科医、理学療法士、アスレティックトレーナー、栄養士の方々の講演のあと、参加型セッションとして、現状はどの程度女性スタッフが参加できているか、どの程度必要とされているか、そして今後の課題についての討論がなされました。現場では女性スタッフしかできないサポートも存在するため女性スタッフの必要性は高いものの、出産や育児などで一時的に現場を離れたり制限したりする必要がでてきたときに仕事の継続が難しいという課題があります。そのような課題をクリアするためには制度を整えることと同時に、個人が専門性を磨く必要があるという講師の方のお話でした。そしてスタッフを依頼する側の先生方からも、制度を整え、個人の専門性を磨くことの2点がクリアできるようなときにはぜひ女性スタッフに活躍してほしいという意見が多くあったのが印象的でした。

 今回の学会参加で近年の整形外科の方向性を確認できたとともに、スポーツ選手に関わる女性理学療法士として自己研鑽の必要を改めて強く感じました。また、日本整形外科学会は海外の著名な整形外科医の講演も聴くことができる大変貴重な学会です。今後も積極的に参加して、日本だけでなく世界の医療の方向性をアップデートしてまいりたいと思います。